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Channel: 寺山 英樹 | ダイビングと海の総合サイト・オーシャナ
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バディ潜水(セルフダイビング)を後押しする規定とは~Cカード取得後そのままバディ潜水(後編)~

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Cカード取得後のバディ潜水(撮影:越智隆治)

先日、ヤドカリ仙人さんが、2014年のダイビング界の流れとして、PADIのプログラム改定に伴い、自己責任で潜ることへの原点回帰を指摘していました。
ダイバーにおなじみのあの言葉が消える!?~2014年ダイビング界の大きな流れと小さな話~ | オーシャナ

日本ではCカード講習後もガイドやインストラクターなど、プロのダイバーと潜ることが一般的ですが、この改定によって、プロと一緒に潜らない、いわゆるバディ潜水(セルフダイビング)も一般化するでしょうか。

ダイビングスタイルの選択肢が増えることを願う1人ですが、実現のためには講習内容以外にも課題がありそうです。

先日、Cカードを取得後にそのままバディ潜水をするオーストラリア・ケアンズのダイビングスタイルをご紹介しました。
ダイビングデビューの理想形?「Cカード取得後そのままバディ潜水」に密着!(前編) | オーシャナ

この中で、僕が指摘したことは、以下のようなことでした。

講習生とイントラが、バディ潜水が前提のダイビングに意識が向いていて、受け入れるダイビングフィールドも体制が整っていることが、いきなりバディ潜水デビューできる条件でしょう。

そういう意味では、PADIの改定は、前半部の“バディ潜水が前提のダイビングに意識が向かう”ことを後押ししてくれるはずですが、問題は後半の受け入れ態勢の問題です。

いくら内容がよくても、守られなければ意味がないということです。

ということで、まずは、バディ潜水が当たり前の、オーストラリア・ケアンズの環境を見てみましょう。

バディ潜水を後押しするクイーンズランド州のダイビング規定

ケアンズでバディ潜水の環境が整っているのは、ケアンズのあるクイーンズランド州のダイビングに関わる規定が大きく関係しています。

Cカード取得即バディ潜水ができるには、まず、Cカード講習がきちんと行われることが前提となりますが、指導団体のプログラムのみだと、各ショップの解釈や方針によって講習内容が異なり、価格競争や手抜きを引き起こす可能性が出てきます。
指導団体も民間企業で、ショップが顧客という事情を考えても当然です。

その点、クイーンズランド州では、法令として、ときに指導団体より厳格な規定を設けることによって、抜け道を防ぐ役割をしているのです。

ダイビング産業は3段階の法律制度によって規制を受けていますが、具体的な一例をあげれば、指導団体のプログラムでは水泳ができなくてもスノーケリング代用でOKとしているところを、州の規定では代用は不可で、水泳で200m必ず泳げなければいけないとしています。

行政が関わることで、期間短縮と価格競争に巻き込まれず、ケアンズで取材したDSDDがプール2日間を含めて最低でも4日間の日程を組めるのもこうした背景があります。

Cカード取得後のバディ潜水(撮影:越智隆治)

ただ、しっかり講習を受けられる環境があったとしても、それでもたった4日間ダイビングに触れただけのダイバー。
講習内容や個人の力量とは別に、ダイビングフィールドとしての受け入れ態勢も整っていなければリスクは大きくなってしまいます。

その点でも、クイーンズランド州の法律規定が関わっています。

■例えば、マリンスポーツ活動の規定
Safety in Recreational Water Activities Act 2011

船上からのアウトルック(監視)やヘッドカウント(人数確認)、緊急時のレスキュー体制、そして、残圧、水深、潜水時間にも規定があって、ブリーフィングで伝えられたうえで、ダイビング後にすべて記録されてサインを求められます。

あいまいさが排除され、守るべきことが明確で、緊急時の対策も万全というわけです(逆にルーティン化の末の形骸化のリスクを含みますが)。

例えば、コースで迷ってしまっても、ダイバーは慌てることなく浮上して船に戻ればよいだけですし、流されそうならフロートを上げる。
そうすれば、ダイビングショップの監視はすぐに気づいてピックアップしてくれるでしょう。
そういうことが起こることを想定したシステムになってるからです。

日本で生かすことはできるのか!?

クイーンズランド州の規定のもと、ダイバー側と受け入れ側のコンセンサスがあってはじめて成立するバディ潜水。
言い方を変えれば、受け入れ側としては規定を守る代わりに、受け入れ態勢を整えたら、あとはダイバー自身がしっかり自己責任で潜ってね、ということです。

プロと潜ることが当たり前の日本のダイバーが潜りにいって、面食らうのはこうしたことが原因です。

もちろん、行政の介入や規制によるデメリットもありますし、国の事情や状況が異なるので、日本ですぐに見習えとは言いません。

こうした法律が成り立つのは、日本に比べて、クイーンズランド州でのマリンアクティビティを楽しむ観光客の数が圧倒的に多いからでしょうし、今すぐこれらの規定を日本にもってきたら、ダイビングショップの経営が破たんします。
実際、ケアンズのダイビングショップも、日本人だけでなくイングリッシュマーケットも相手にする大きな資本だからこそ成り立っているとも言えます。

ただ、クイーンズランドの例をすべては真似することができなくても、ディテールを見れば取り入れられることはたくさんあります。

また、何より、講習が正しく実施されるよう、性善説に立つのはやめて、バディ潜水ができる環境が整うよう、行政や指導団体でなくても、グリップを効かすことのできる、組織、団体、ルールが必要なことを教えてくれているような気がしてなりません。

Cカード取得後のバディ潜水(撮影:越智隆治)

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