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Channel: 寺山 英樹 | ダイビングと海の総合サイト・オーシャナ
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「ニモはカクレクマノミ?」を本場グレートバリアリーフの海で考える

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グレートバリアリーフでイースタンクラウンアネモネフィッシュを前にして思い浮かぶのは、やっぱり、ニモ!

GBRイークラウンアネモネフィッシュ(撮影:越智隆治)

GBRで撮影したイースタンクラウンアネモネフィッシュ

グレートバリアリーフを舞台としたディズニー映画「ファインディング・ニモ」。

「ファインディング・ニモ」のニモ
ニモ(カクレクマノミ) | ファインディング・ニモ | ディズニーキャラクターより

映画の影響で、ダイバーの間でも、すっかりカクレクマノミのことをニモという愛称で呼ぶことが定着し、逆に「ニモはね、本当はカクレクマノミではく、イースタンクラウンアネモネフィッシュなんだよ。ふふふ」とダイバーがうんちくを垂れることのできる数少ない機会にもなっています。

映画の話もよく話題になっていましたが、僕はだんまりを決め込んでいました。
なぜなら…映画を見ていないから!(>_<)

ダイバーなのに、最近まで、「ファイティング・ニモ」だと思っていて、なんか戦うんかな、ぐらいにしか思っていなくてすいません。

ニモはカクレクマノミなのか、イースタンクラウンアネモネフィッシュなのか。

ネットやこれまで聞いた意見を参考に、映画を見てもいないくせにどっちなのか考えてみたいと思います。

うっかりなのか、わかりやすくするためか…

そもそもの議論の発端は、「ファインディング・ニモ」の公式サイトが「ニモはカクレクマノミ」という説明をしたことにあるようです。

グレートバリアリーフが舞台だし、オレンジが濃く、バンドの黒縁が太いなど、ニモそのものであるイースタンクラウンアネモネフィッシュがニモだと説明しておけば丸くおさまっていたのに、どういうわけかカクレクマノミと説明してしまったようです。

カクレクマノミ。白い横縞に黒縁がない

カクレクマノミ。白い横縞に黒縁がない

しかし、うっかり間違えたのか、わかりやすくしようと思ったのかは微妙です。
さりげなく訂正したという情報もあるようで、うっかり間違いを支持する人もいるようですが、僕はわかりやすくしたい&どうでもよかったんじゃないかと思います。

アリゲーターでもクロコダイルでも、なんか、ワニだし的な。

英名の曖昧さと和名のエアポケット

勝手な想像ですが、イースタン・クラウンアネモネフィッシュだと長いしわかりづらい。
なので、英名がウエスタン・クラウンアネモネフィッシュのカクレクマノミも同じクラウンアネモネフィッシュだし、「ま、カクレクマノミでいっか!」と発表したら、思った以上にツッコミが入り、「うるせーなー。どっちでもええやん」的に直したのではないでしょうか。

そもそも、魚の英名っていい加減なうえに、イースタンクラウンアネモネフィッシュに和名がなかったのが災いしたのでしょう。

実際、英語圏では、ざっくりクラウンアネモネフィッシュってことで、何ら問題になっていませんからね。
クラウン=ピエロで、映画の中でも「クマノミは笑わせるのが得意」といった会話も出てくるそうなので、クラウンアネモネフィッシュを意識していることは間違いないのでしょう。

英名では同じクラウンアネモネフィッシュだけど、学名では別種で、和名が片方しかない。
だったら、カクレクマノミでいいんじゃないかと思えてきます。

カクレクマノミでもいいんじゃない?

それでも、いろんなところから大人げないツッコミがはいりまくったようです。

ダイバーにもおなじみの魚類の分類学の権威、瀬能宏先生まで登場しちゃって、「映画の『ファインディング・ニモ』はカクレクマノミ(Amphiprion ocellaris)がモデルではありません。よく似た別種のクラウンフィッシュあるいはクラウンアネモネフィッシュ(Amphiprion percula)がモデルです。つまり、『ニモ』とカクレクマノミは分類学的には別種として扱われています」とばっさり(笑)。

学名レベルでは違う種であり、背びれの数も違うといった身もふたもない話も出てきて、フルボッコなのです。

でも、それはあくまで学問上の話であり、種は違っても大きくは同じ仲間だし、日本人にはわかりやすく、沖縄とかで会えたらテンション上がるし、カクレクマノミってことでいいのではないでしょうか?

ダイビングを題材にして大ヒットした映画「彼女が水着にきがえたら」のロケでも湘南の海にエントリーしたらそこはケラマになるわけです。

「ファインディング・ニモ」では、お母さんが死ぬお話も出てくるそうですが、そもそもクマノミは性転換したり、親子で住む習性がなかったりするので、あまり厳密になってしまうと、お母さんが死んだら、ある日突然、タイで工事を済ませたお父さんが「今日からパパがお母さんだよ」とカミングアウトしたり、親だと思ってたのに実は血がつながっていなかった、みたいな複雑過ぎる家庭事情を描かなくてはならなくなります。

クマノミの大人と子ども(撮影:越智隆治)

大小のクマノミは親子に見えるが、基本的に親子で住む習性はない

さらに、そこまで映画のキャラで分類にこだわるなら、人間みたいな表情をして会話までできるニモはカクレクマノミかどうかというより、ミュータントか化け物かって話。

そうすると、映画自体も遺伝子異常の魚が主役の、海洋汚染のメタファー映画のような気すらしてきます。

ということで、僕の中では、“カクレクマノミ≒ニモ”といった感じで、ニモのモデルは? と聞かれれば「イースタンクラウンアネモネフィッシュだよ」とカクレクマノミの小話も交えて答えますが、誰かがカクレクマノミを見て「ニモだよ!」と説明していても、まあ、カクレクマノミもニモだよなってことで野暮なツッコミはいれないことにして、ビギナーの女性ダイバーに格好つけたいときは、さりげなく、イースタンでクラウンなうんちくを垂れ、ワールドワイドな海な男を印象付けようと思います。

でも、ニモってことで、沖縄あたりでカクレクマノミの乱獲が話題になっていましたが、そういう人には「ニモじゃないよーだ!」って言ってやります。

撮影協力:ディープシーダイバーズデン

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